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インフルエンザで仕事を休んだときの所得補償【傷病手当金】

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インフルエンザの流行の時季がやってきました。インフルエンザというものは予防接種を受け体調管理に気を付けていても感染する可能性がある避けられるない病気です。インフルエンザは高熱が出て周りにも感染してしまう可能性があり、休業は避けられないでしょう。

インフルエンザに感染した場合の感染予防は会社の考え方によって異なります。「感染したら1週間の自宅待機」や「熱が下がってから5日間は自宅待機」等、独自のルールを決めている会社が多いでしょう。社内での集団感染を防ぐため会社としては当然の処置だと考えられます。

もしあなたがインフルエンザに感染したら、家族や職場に移してないか心配なのはもちろんですが、仕事を休んだ期間の給料はどうなるのか気になりますよね?休んだ期間の所得を補償してもらえるのであれば助かりますが、実際はほとんどの会社が保障などしてくれません。

今回はインフルエンザで休んだ間の所得補償について考察していきたいと思います。
「インフルエンザで会社を休んだ場合は・・・」というような具体例は労働基準法には定められていないので、あくまで考察ということでお願いします。

10日間の自宅待機というケース

インフルエンザに感染した場合、一律10日の自宅待機というルールを設けている会社と仮定します。この10日間で受け取ることができる可能性がある所得補償は、健康保険の傷病手当金会社から払われる休業手当です。


最初に傷病手当金をみていきましょう。

健康保険の傷病手当金医師が就労不能と認める期間のうち休業4日目から支給されます。一般的には熱が下がってから2日間は感染する可能性があるため、今回のケースでは5日間就労不能と診断されたとする。実際この就労不能期間は医師が独断できめるため同じ病気でも先生によって違います。ポイントは医師が就労不能と認める期間であって、会社が就労不能と判断した期間ではないので注意しましょう。

傷病手当金の支給額(医師が5日間就労不能と認めた場合)

月給例:300,000円
標準報酬日額:10,000円(10,000円÷30=10,000円)
支給日額:10,000円×2/3=6,667円

支給額:6,667円×2日間=13,334円

※休業1日目から3日目までを待期期間といい、待期期間は傷病手当金は支給されません。また、連続3日でなければ待期期間は完成しません。



次に休業手当をみていきましょう。
最初の5日間は傷病手当金が支給されますが、残りの5日間は会社からの休業手当が支給されることになります。休業手当は会社の懐が痛むので支払いを渋る可能性が高いです。そもそも休業手当については知らない人が多いのでわざわざ言ってこない可能性もあります。

休業手当とは使用者の責に帰すべき事由(会社の責任)による休業の場合、休業期間中に支払わなければならない手当のことです。今回の場合、「医師の判断を超えて追加で5日間の自宅待機を命ずる」ことが会社の責任にあたるのかどうかが論点となります。

労働者としては、後の5日間は医師が就労不能と認めた期間でもなく、心身ともに回復し働く意思があった期間です。その期間を会社の判断で休業させる場合は休業手当(平均賃金の60%)を支払ってほしいと考えるのが妥当かと考えます。

しかし、会社のとしてもインフルエンザの感染時期の予測は難しく、感染防止をするという社会的責任もあるかと思います。会社の主張も理解できない訳ではありませんが、その全ての責任を休業手当を支払はないという形で労働者に押し付けるという考えは納得できないでしょう。

実際にこのようなケースでは判例からも会社に支払い義務があるとされており、会社は休業手当を支払わなければならないとされています。休業手当が60%ですので、ほぼ折半ということで折り合いがつけばちょうどよいかと思います。

休業手当の支給額(後の5日間)

月給例:300,000円
平均賃金:9,783円(300,000円+300,000円+300,000円)÷(31+30+31)=9,783円
休業手当:5,870円(9,783円×60/100=5,870円)

支給額:5,870円×5日間=29,350円


今回のインフルエンザに感染したら一律10日間の自宅待機のケースでは
健康保険の傷病手当金13,334円と会社の休業手当29,350円、合計42,684円受け取れる可能性が高いということで結論とさせていただきます。