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高額な医療費をさらに節約する2つのテクニック【高額療養費】

高額な医療費が掛かってしまったときに救ってくれる「高額療養費制度」ですが、制度の仕組みを理解し賢く利用することで、実はさらに医療費を節約することも可能です。今回はそんな節約テクニックを2つご紹介します。

高額療養費の概要はこちらsoumunohitorigoto.hatenablog.com

高額療養費の計算の仕組みを理解する

まず医療費の計算の大前提として計算の仕組みを知る必要があります。計算期間は歴月で1日~末日までの1か月に掛かった医療費が負担限度額を超えた場合、高額療養費の対象になります。そして月別、医科歯科別、さらに通院入院別でそれぞれ計算します。

医療関係者以外にはあまり馴染みのない言葉ですがレセプト(診療報酬明細書)が月別、医科歯科別、入院通院別になっているため、このように種別で分けて負担限度額を超えた分を高額療養費として還付する仕組みになっています。


高額療養費の負担限度額(70歳未満)

参考に載せています。

所得区分 負担限度額 多数回該当
標準報酬月額
83万円以上
252,600円+(医療費-500,000円)×1% 140,100円
標準報酬月額
53万円以上
83万円未満
167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
標準報酬
月額
28万円以上
53万円未満
80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
標準報酬月額
28万円未満
57,600円 44,400円
低所得
(住民税非課税)
35,400円 24,600円


できるだけ同月内に治療し節約

負担限度額の算定はレセプト別で計算されますので、できるだけレセプトをまとめることが1つめの節約のコツです。

例えば急な入院や手術でない場合、できるだけ月を跨がないように日程の調整等をお願いしてみましょう。

1回数万円のような高額な通院をしている場合はできるだけ1か月にまとめてもらえるようお願いしてみましょう。
所得区分によって毎月1回5万円の通院をしており対象とならない場合であっても、「1日と31日に受診する月」と「受診しない月」を交互にすれば概ね毎月1回のペースでも高額療養費の対象となります。

いくら節約できるとはいえ、無理なお願いで適切な治療を妨げないよう心がけることも大切です。

高額療養費の支払い事例

月収30万円のAさんと仮定します。
Aさんは標準報酬月額28万円以上の区分となるため計算式は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」が適用されます。

  • 同月内の入院で医療費100万円(3割30万円)

高額療養費の対象となり87,430円の支払いとなります。

  • 月を跨ぐ入院で医療費100万円(50万+50万)(3割30万円)

高額療養費の対象となりますが、月単位でレセプトが分かれます。
164,860円(82,430円×2か月)の支払いとなります。


21,000円以上の治療費は世帯で合算して節約(70歳未満)

あまり知られていませんが、高額療養費には21,000円以上の治療費は世帯で合算して還付の申請ができるという特例があります。
一人の治療費だけでなく、世帯単位の高額な治療費の軽減する制度となります。

例えば、月収20万円のBさんはケガの通院でC病院かかり、3割の5万円を支払ったとします。同月Bさんの妻もケガをしD病院に通院で3割の5万円を支払ったとします。
それぞれの支払いは負担限度額の57,600円以下ですが、世帯では1か月10万円を支払ったことになり申請することで高額療養費の還付を受けることができます。

また、家族だけでなく一人で複数を合算できる場合もあり、月収20万円のBさんはケガの通院でC病院かかり、3割の5万円を支払ったとします。さらに同月C病院の歯科にも通院し3割の5万円を支払ったとします。
この場合も同様に世帯で1か月10万円を支払ったことになり申請することで高額療養費の還付を受けることができます。

世帯合算の支払い事例

月収20万円のBさん世帯と仮定します。

  • Bさん通院5万円、Bさんの妻通院5万円

合算○ 57,600円の限度額が適用となります。

  • Bさん入院10万円、Bさん妻通院1万円

合算× 妻の通院が21,000円を超えていないため合算できません。
Bさんの入院57,600円と妻の通院10,000円をそれぞれ支払います。

  • BさんA入院5万円、Bさん通院5万円

合算○ 57,600円の限度額が適用となります。


まとめ

「1か月単位で計算する」「世帯で合算できる」この2つポイントを覚えていたら大きく節約できる可能性があります。
多くの社会保険制度はとにかく申請しなければ還付されません。知らなければ損をします。

特に世帯合算の場合、単独では高額療養費の対象とならないため病院から案内はありません。請求は2年前まで遡れますので心当たりのあるかたは健康保険の窓口に問い合わせることをおすすめします。