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学費と生活費300万円を貰いながら看護師になろう【専門実践教育訓練】

「一度仕事に就いたものの自分には合っていなかった」「思っていたより収入に結びつかなかった」このような悩みを抱えながら働いている方も多くいらっしゃるかと思います。専門学校で資格を取って新しい人生を歩みたいと考えたことありませんか?

そんな方に朗報です。

平成26年10月1日から教育訓練給付金の拡大により、新たな「専門実践教育訓練」という制度が始まり1年が経ちました。

この制度を平たく言うと、社会人が資格を取るために専門学校に通うのであれば学費とその間の生活費を雇用保険から出しますよといったすごくありがたい内容です。その額は学費の60%(最大144万円)と、最大3年の在学中に退職前の月給の約40%~25%です。総額300万円を超えるような太っ腹な給付と言えます。

この専門実践教育訓練は失業給付と言われる雇用保険から支払われるもので、資格取得によってキャリアアップを支援し、長期雇用の安定を図ることを目的としています。

正式名称は学費の部分が「専門実践教育訓練給付金」、生活費の部分が「教育訓練支援給付金」であり、一部の支給要件が異なります。

専門実践教育訓練給付金の支給要件

・初回受給の場合、講座の受講開始日までに通算して2年以上の雇用保険の被保険者期間を有している方
・平成26年10月1日前に教育訓練給付金を受給した場合、講座の受講開始日までに通算して2年以上の雇用保険の被保険者を有している方
・平成26年10月1日以降に教育訓練給付金を受給した場合、前回の受講開始日から次の専門実践教育訓練の受講開始日前までの間に10年以上雇用保険被保険者期間を有している方(この場合、当該専門実践教育訓練の受講開始日前までに、前回の教育訓練給付金の受給から10年以上経過していない場合は、対象となりません。)

引用元:厚生労働省HP

大前提として社会人向けの給付ですので、初めてこの給付を受けようとする方は2年以上雇用保険に加入している(していた)必要があります。同じ給付を2回目以降受ける方は10年以上雇用保険に加入している必要があります。

始まってまもない制度ですので、恐らくほとんどの方は初回に該当します。2年以上のフルタイムで働いていれば条件はクリアとなります。

週20時間以上でパートで働く方も雇用保険に入っておられるかと思いますので、パートから資格を取得し、正社員へのキャリアアップにも利用できます。

専門実践教育訓練給付金の額

受講者が支払った教育訓練経費のうち、40%を支給(年間上限32万円)。更に、受講修了日から一年以内に資格取得等し、被保険者として雇用された又は雇用されている等の場合には20%を追加支給(合計60%、年間上限48万円)。給付期間は原則2年(資格の取得につながる場合は最大3年)

引用元:厚生労働省HP

要約すると

  1. 在学中に専門学校の学費の40%(年間上限32万円)を支給。
  2. 卒業後1年以内に資格を取得し就職すると追加で20%(年間上限16万円)を支給。

学費の援助と、さらに資格を取得し就職するというこの制度の目的を果たした方には追加のご褒美が支給されるといった内容です。

3年制の看護師専門学校を卒業し就職した場合の給付額

年間の学費が100万円と仮定した場合、総額144万円の給付金が支給されます。
年間100万円×60%=60万円→上限の48万円
→48万円×3年=144万円

対象となる資格

もちろん勝手に好きな専門学校に行って学費が支給されるわけではありません。
対象の資格は以下のとおりです。

業務独占資格名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程
  [訓練期間は1年以上3年以内(職業能力開発局長の定める1年未満の養成課程を含む。)]

  〈対象となる業務独占資格
  助産師、看護師、准看護師診療放射線技師臨床検査技師理学療法士作業療法士視能訓練士言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士救急救命士、歯科衛生士、
   歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師、美容師、理容師、測量士、電気工事士建築士海技士、水先人、操縦士、航空整備士

  〈対象となる名称独占資格〉 
   保健師、調理師、栄養士、介護福祉士社会福祉士精神保健福祉士、保育士、製菓衛生師

引用元:厚生労働省HP

雇用の安定といった観点から需要の高い看護師、理学療法士介護福祉士等、医療福祉系の資格が目立ちます。

指定の学校が知りたい方はこちらかご確認ください。

教育訓練支援給付金の支給要件

教育訓練支援給付金は専門学校に在学中の生活費を支援する給付です。
名称が紛らわしいですが上記の専門実践教育訓練給付金の支給要件を満たすこと、かつ45歳未満の方が対象となります。

言葉が適切ではないかもしれませんが、学校卒業後も長く務める事ができる若年~中年を対象としています。「できるだけ先の長い若年者を支援したい」「45歳以上であればそれなりに貯えもあるでしょ」といったことだと思います。

教育訓練支援給付金の額

教育訓練支援給付金は失業した場合に支給される一般的な基本手当(失業手当)の50%となります。この額が在学期間に合わせて支給されることとなります。

25歳月給20万円の場合の概算

基本手当日額4,747円×50%=日額2,376円
この日額2,376円が在学期間中支給されます。
3年間で約260万円、月にすると約72,000円の生活費となります。

基本手当日額は離職日前6か月の給与を180で除した額に給付率を掛け基本日額を算出します。(年齢別上限もあり)複雑な計算式になっていますので詳細が知りたい方はこちらかご確認ください。
ハローワークインターネットサービス - 教育訓練給付


まとめ

専門実践教育訓練は学費と生活費の2本立てでキャリアアップを支援してくれるとても手厚い給付です。給付額の大きさからみても過去にないぐらいの厚い給付となっています。
支給要件がありますので、気になる方は管轄のハローワークで話をきいてみてください。
経済的な理由で進学を諦めていた方も是非この機会に考えてみてはいかがでしょうか。